オープンへの想いを熱く語ります管理者対談

自立的に見通しを持って
過ごしてもらうことが、
新しい場所であれば実現できる。

2003年に閑⾕福祉会に⼊職した同期2⼈が、20年の時を経て
今回のプロジェクトのリーダーとしてタッグを組むことになりました。
そこで、12⽉のオープンを間近に緊急対談!
どういった経緯でこのプロジェクトが⽴ち上がったのか、新事業所のビジョン、今抱える課題、そして将来の展望とは?
「閑⾕ライフステージ・せと」管理者の安達啓⽰と、「障害者⽀援施設 しずたに」サービス管理責任者の上⾥征⼈が、
それぞれの⽴場から熱い想いを語ります。

⾃⼰紹介

安達

 まずは⾃⼰紹介から…、私たち同期なんですよね。

上⾥

 平成15年4⽉1⽇に⼊職で、もう21年⽬。私は「しずたに(障害者⽀援施設 しずたに)」に20年、ココしか知らないんです。今は「しずたに」のサービス管理責任者です。

安達

 私は最初1カ⽉くらい「しずたに」で、そのあとは通所の「閑⾕ワークセンター・せと」に17年くらい。私たち⼆⼈はずっと異動がないから、なんで?ってよく噂になってましたよね(笑)。現在は、2年前から「閑⾕ライフステージ・せと」というグループホームで管理者兼サービス管理責任者をやっています。

しずたに⽴て替え!?

安達

 そんな同期⼆⼈が、しずたにの新しいプロジェクトに関わっているということで、対談をすることになりました。
まずは、上⾥さんがサービス管理責任者をしている「しずたに」のA棟(強度⾏動障害のある⾃閉スペクトラム症の⽅を中⼼にするユニット)が、「閑⾕ライフステージ・せと」のグループホーム増設に伴って移転することになった経緯を聞きたいんですが。

上⾥

 プロジェクトがスタートしたのは5年くらい前ですね。「しずたに」が建って30年近く経っていたので、毎年故障や劣化などの対応で修繕費がすごくて。利⽤者さんの重度化・⾼齢化にもなかなか対応できておらず、つぎはぎ状態で進んできてしまって…。いよいよ⽼朽化を⾒据えて⽴て替えを検討しようということで、法⼈内でプロジェクトチームが⽴ち上がったんです。

 考える中で、同じ場所に60名規模の⼊所施設をもう⼀回建て直せたらという話もあったんですが、建て替える間に60名の⽅がどこでどう過ごすかが課題になったんですよね。あと、今の建物の裏⼭が急傾斜地で。側溝を作ってもらい⼭⽔が敷地外に流れるようにはしてもらったんですけど、すべてのリスクは解消されていません。そんな背景から、60名規模のものを同じ場所にもう⼀度建てるのは難しいのではないか等いろんな意⾒が出ました。

やるなら今が
ラストチャンスなんじゃないか

上⾥

 もともと閑⾕福祉会では⼊所施設から地域移⾏という考えが強く、平成19年には20名の⽅がグループホームへ移⾏されています。今後利⽤者60⼈全員が⼀度に外に出ていくのは難しいだろうという意⾒もありました。グループホームと⼊所施設の利点や⽋点などを知ろうと、県外の強度⾏動障害に特化している⼊所施設やグループホームに⾒学に⾏かせてもらいました。いろいろ聞かせてもらって、どういった形態をとるのがいいのかを検証してきました。

 そこで思ったことは、まず利⽤者さんがお若いうちのほうが⽣活環境の変化に適応しやすいのではないかということ、また強度⾏動障害の⽅の特性から⽣活の場と⽇中過ごすところが明確に分かれたほうがより構造化がしやすいということでした。しずたにの利⽤者さんは建物の2階のA棟の⽅と、1階の男性棟・⼥性棟の⽅といらっしゃるんですが、実はA棟の利⽤者さんがその他のユニットの⽅たちよりも平均年齢が若いんです。全体では平均年齢49歳くらいなんですが、A棟の⽅は40代前半です。環境が変わることが不安につながる利⽤者さんが多いんですが、今がラストチャンスなんじゃないかって話になってました。

安達

 そのタイミングで「閑⾕ライフステージ・せと」の地主さんが、「閑⾕ライフステージ・せと」の周りの⼟地活⽤を検討されていて、閑⾕福祉会へグループホームの増設の提案があったのですね。「閑⾕ライフステージ・せと」は瀬⼾駅から徒歩5分の住宅地で町中ですよね。

上⾥

 そうなんです、⼟地の広さや、好アクセスの⽴地、利⽤者さんの年齢やタイミングが、その話にぴたっとはまったのか、話が⼀気に動き始めたんです。それが、2年前くらいのことですね。その後しずたに内部はもとより法⼈理事会で検討を重ね、A棟の利⽤者さん20名が瀬⼾のグループホーム(「閑⾕ライフステージ・せと」)に移⾏するっていうことになりました。

 「しずたに」は60名定員から40名定員に縮⼩して⾼齢化・重度化に特化していく、新しく建てるグループホームを強度⾏動障害の⽅に特化していく、急にそんなチャンスに恵まれたという経緯です。

まだ、スタートラインに
⽴ったに過ぎない

安達

 その移転が決まり、「閑⾕ライフステージ・せと」は既存の2棟に3棟が新設され、全部で5棟となります。既存の2棟の利⽤者さんは⼀般就職していたり、就労継続事業所に通っていたりと、⽣活⾯が⾃⽴している⼈が中⼼で。⼀⽅、新設3棟の⽅は、強度⾏動障害の⼈が中⼼。同じ「閑⾕ライフステージ・せと」だけど、機能としては少し違ってくるのかもしれないですね。いずれにしても、グループホームの利点を探しながら⼀緒にやっていけたらと思っています。

 そして、グループホーム3棟と同時に、⽣活介護事業所も新たにオープンします。こちらは、元A棟の⽅たちが⽇中過ごす場になるんですよね。⼀気に話が進み、建物が出来上がり、私としてはちょっと不安も(笑)。現場の職員の反応はどんな感じですか?

上⾥

 正直に⾔うと不安は利⽤者さんと同じく職員にもあって。かなり⼤きな変化になるので、体制や具体的な⽀援などがテーマにあがりました。ただ、今ある課題を解決するための、いいきっかけになるんじゃないかとも思っています。

 私が「しずたに」に⼊った20年前の頃って、⾃閉症の理解も認識も今とはずっと違っていて。20年前は利⽤者さんがパニックになったり、⾃分の体を傷つけたり、他害に繋がる場⾯が、⼀⽇を通してずっとあったんです。職員はそれをあたふたしながら、あっち⾏ってこっち⾏って…ということで⼀⽇が終わっていた感じでした。それが、いろんな勉強会やセミナーに参加することで、少しずつ特性などいろんなことが分かってきたんです。利⽤者さんへの刺激が多すぎることとか、⾔葉の理解が難しい⽅に声かけが多すぎることとか。いろんな失敗もしながらも⽀援を繰り返していく中で、以前のように毎⽇パニックになるって⽅がほとんどおられなくなって。笑顔で過ごされたり、落ち着いて過ごされたりする⽇の⽅が多くなる、というところまでは⼊所施設の機能として辿り着いたんです。

 ただ、職員の半分はそこを⽀援のゴールにしてしまっていて。利⽤者さんが落ち着いたんだからいいんじゃないと思っちゃいそうになった時に、いや待て待て、と。これはスタートラインに⽴ったに過ぎなくて、やっと利⽤者さんの⽣活の質や⽣きがいや楽しみに着⽬できるフィールドに⽴てたところなんじゃないのかって。

新しい場所であれば
変えられる

上⾥

 ⼊所施設って、どうしても集団⽣活になってしまうところがあって。いろんな⽇課を安定的に提供できていると思っていたんですが、コンサルテーションに⼊ってもらった時などに⾔われるのが、「ほとんどの利⽤者さんが、何かに参加したらそれ以外が待ち時間になっている」とか「何もやることがなくて職員の後ろをずっとついて⾏かれている⼈が多いですよね」とか。⾃分たちも分かってはいたけど、⼊所だから仕⽅ないと少し諦めてしまっていたのですが、やっぱりこれじゃいけないと考えて。じゃあ、空いてる時間をどう過ごすかとか、その時間をどう本⼈たちに伝えていくかとか、ケース検討を繰り返しました。で、最終的には、「本⼈が⾃⽴的に⾒通しを持って過ごせる」ということを、A棟の⽅全員に⽬指していかないといけないなと思うようになりました。

 絵に描いた餅みたいなことを⾔ってるけど、⼊所っていう環境でできなかったことも、新しい場所であれば変えられるのかなと。いろんな社会資源があるし、今まで構造上できにくかった、⽣活と⽇中の切り分けもできるんですよね。今は、⽣活の場と⽇中過ごす場が同じなので、朝ごはんを⾷べたら散歩の時間までちょっとお部屋で横になりますみたいな⽅もいたりとかして、線がなかなか引けず、職員の中で引いたつもりでも利⽤者さんの中では繋がっていて。そういったことも、グループホームと⽣活介護の事業所が併設するということで、実現できるんですよね。

 住む場所が変わるという⼤きな変化があれども、本⼈が理解できるスケジュールの⽤意や、特性に配慮した環境整備によって、利⽤者さんが「ここは安⼼できる場所だな」とか「前いたところよりもいろんなことができるな」とか、いずれは思ってもらえると信じていて。A棟の職員の会議で「あれ⼤丈夫かな」「これは準備が必要だな」といろいろ声が上がっていますが、その背景には、変化に挑戦するという職員共通の前向きな想いがあると感じています。

“個性が⾏き交う”場所の
ネーミング

安達

 それぞれの建物には名前がついていますね。新しいグループホーム3棟は「オリーブ」「ポプラ」「ユーカリ」。⽣活介護事業所は「colorful space しずたに」。どんな意味を込めたんですか? 

上⾥

 「オリーブ」「ユーカリ」「ポプラ」、全部⽊なんですよね。(※1)⽣活の場所ってどっしり構えているようなイメージがあったのと、元々「閑⾕ライフステージ・せと」の最初の2棟が「ハナミズキ」と「すみれ」っていう植物の名前で。アンケートも取ったりして、最終的にA棟の⽅は全員男性なので、男性っぽさもイメージして選びました。それぞれ名前が違うように、棟ごとの個性が出せたらいいですね。できれば各ホームの⼊り⼝にシンボルツリーを植えたいなと思っています。

 ⽣活介護のほうは「colorful space しずたに」。「しずたに」って⾔葉がなくてもいいという意⾒もあったんですが、私たち「しずたに」から来ましたっていうメッセージを伝えたいのもあり、あえて残しました。「colorful space」の⽅は…、⾃分の法⼈を褒めるのもなんですけど、「にじいろスクエア・せとうち」ってすごくいい名前だなと思っていて。本当はそのまま使いたくて、最初の頃「にじいろスクエア・しずたに」って勝⼿に⾔ってたんですよ(笑)。まさに「個性が⾏き交う」ってことを⾔葉で表現したかったので。「集団」でなくて「個⼈」なんです。「個⼈の⾃⽴的なこと」を表現したくて「colorful」にしました。「space」は「場所」のほかに「宇宙」の意味も兼ねていて。「広がり」とか「まだまだ未開」とか「これから開拓していく」っていう可能性をイメージしています。

安達

 名前を聞いた時にいいなと思ったけど、説明を聞くと余計にいいですね!特に「宇宙」のイメージを聞いて、ピンときました。「にじいろスクエア・せとうち」の名前が出ましたが、ここは2016年にオープンし、障害がある⼦どもたちの幼児期の療育から18歳以降の⽣活介護までを⾏っている施設です。その中の⽣活介護「ひばり」は18歳以降の強度⾏動障害の⽅が通われています。今回のプロジェクトとの流れも感じますよね。

上⾥

 そうですね。「しずたに」のショートステイで、「ひばり」の利⽤者さんが利⽤されることもあるんですが、児童期に療育をさせてもらっていた職員がいて、「しずたに」で再会みたいなことがありました。閑⾕福祉会は、強度⾏動障害の⽅への取り組みを、私が⼊職した平成15年に始めています。法⼈として、幼児期から障害のある⼦どもに関わり、ステージごとに⼀貫して⽀援する体制がだんだん整ってきたことを実感しますね。今後も「ひばり」と連携することもあるでしょうし、グループホームの部屋が空いた時には、「ひばり」の利⽤者さんが⼊居を考える時のひとつの選択肢になればいいなと思います。
※1…それぞれの⽊には、オリーブ=「安らぎ」、ポプラ=「勇気」、ユーカリ=「新⽣」の花⾔葉の意味を込めています

少しでも⽣きづらさを
取り除きたい

安達

 そして、⼀番⼤変なのが職員数の確保。これだけ⼀度にオープンするので、まだ⾜りてないんですよね。強度⾏動障害の⽅の⽀援ってどんな感じなのでしょうか?

上⾥

 経験があるに越したことないけど、経験がないとできないわけじゃないです。押さえておかないといけないポイントをしっかり理解してもらえると、利⽤者さんと、物理的にだけでなく⼼理的にも距離を縮められると思います。距離が近づいてくると、⼤変なことがあっても、その中に楽しみを⾒いだせるようになるんですよね。

⾔葉だけで聞くと、「怖い」とか「⼤変」とか思ったりすると思うんですが、実は利⽤者さん⾃⾝が⼀番困っていたり助けを求めていたりするんです。そういう背景が⾒えてくると、⾃分たちの⽀援やアイデア、取り組みで、少しでも利⽤者さんの⽣きづらさを取り除き、楽しく過ごしてもらえたらと思うようになるんですよ。そして、何かひとつでも利⽤者さんの⼒になれたのかなって思えたりすると、その瞬間には強度⾏動障害の⽅の⽀援にハマっていると思います。

利⽤者さんが
⾃⽴的に動ける形

安達

 この仕事の魅⼒を知ってもらい、⼀緒に働いてくれる仲間を増やしましょう。最後に、今回のプロジェクトを通しての、個⼈的な夢や⽬標を語って終わりにしましょうか。12⽉に事業所4棟がオープンすると、(岡⼭市東区)瀬⼾には、「閑⾕ライフステージ・せと」「colorful space しずたに」「閑⾕ワークセンター・せと」、そして「法⼈本部 瀬⼾事務所」とたくさんの利⽤者さん・職員が集まるようになります。「地域」との交流や連携が⽋かせなくなりますよね。「閑⾕ライフステージ・せと」の2棟ができた時に、私もいろいろやりたいと考えたんだけど、コロナもあって何もできず今に⾄っています。移転が落ち着いたら、是⾮進めたいと思います。

 あと、瀬⼾町の福祉事業所と⼀緒に⽴ち上げた「せとつながり隊」というのがあって、活発に活動していた時期もあるんだけど、今はちょっと停滞していて。今回のオープンで職員数も増えるし、また盛り上げていきたいですね。

上⾥

 私のひとつの役割としては、A棟の移⾏を成功させないといけない。絶対条件だと思いますね。少なくとも利⽤者さんに混乱はあると思うんです。でも乗り越えて「前よりも良くなったな」って思ってもらえるのがファーストステップ。

 その次に、⽇中の過ごし⽅の充実。今は職員がいろんなことの起点になっているんです。利⽤者さんが職員の動きを待ったり、職員についていかれたり…。そういう⽅が⾃分が理解できるツールやスケジュールをもとに、⾃分で⾒通しを持って⾃⽴的にいろんな過ごし⽅を20名それぞれがしているって形が理想ですね。せっせと作業する⼈もいれば、お出かけする⼈もいたり、ゆっくりお⾵呂に⼊ってる⼈もいれば、余暇の部屋でお茶飲んでる⼈がいたり。それぞれのプログラムを職員が提供するんじゃなく、利⽤者さんが⾃⽴的に動いているっていう形をどうにか実現したい。

 そして、グループホームへの移⾏に理解してくださった家族の⽅や後⾒⼈さんに、利⽤者さんのその姿を⾒てもらって、「しずたににおった時よりも⽣き⽣きと楽しそうにしとるな」っていうのを⾒たり感じたりしてもらえたら、このプロジェクトの成功…、成功というか意味があるんじゃないかなと。

 それに向けてですね、なかなか平らではないと思うんですけど、利⽤者さんからいろんなヒントをもらっているんで実現したいですね。今、チームに恵まれていると思っているんで、チームで検討し⼀緒に考えて悩んでやってみて失敗して、たまにうまくいって、その理由を考えて。職員も鍛えてもらいながら、それが実現した時には職員⾃⾝も利⽤者さんを理解できる職員になっていればいいな、そして強固な事業所になっていたらいいなって思います。

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